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男の育児/子どもに「色」を教えるときにお勧めの映画編

子どもの言葉の覚え方

先日妻から、娘(1歳半)が「色」を覚え始めた、と聞きました。「あか」と「あお」の2色だけですが、積み木を見せて「これは何色?」と尋ねると、かなりの確率で正解します。わが娘のことながら大したものだと感心しつつ、偶然では?という疑念がわいたので、さっそく積み木以外のモノで同じように試してみたところ、正解率が低くなりました。おそらく彼女は積み木そのものと関連させて「あか」「あお」と答えているのだろうと思います。色とモノが異なるという理解には、まだ至っていないようです。

さて、ここではたと気づいたのですが、子どもに「色」を教えるというのは随分と難しいことではないでしょうか。

「電車(ぽっぽー)」「猫(にゃーにゃ)」など、モノの名前は比較的容易に教えることができました。実物や映像はもちろん、イラストなど少し抽象化されたものでも、それが何であるかを理解できているようです。
最近は「泣く(えーん)」「無くなる(ないない)」など状態を表す語彙も増えてきました。これらは「泣く仕草」や「お皿が空になった様子」と結びつけて覚えているのだと思います。

「モノ」も「状態」も、視覚や聴覚等の体験を通じて娘に伝えることができました。ですから、今までは言葉を教えることの難しさをあまり意識することはありませんでした。しかしここにきて、モノとは独立した抽象的な「色」という存在をどのように伝えるか、困ってしまったわけです。

「色」で思い出したこの映画

さて、娘に色を教える段になって思い出したのが、1987年に公開された映画「ベルリン・天使の詩」です。


あらすじはこうです(引用元:Wikipedia)

守護天使ダミエル(ブルーノ・ガンツ)は、長い歴史を天使として見届け、人間のあらゆるドラマを寄り添うように見守った。だが親友カシエル(オットー・ザンダー)に永遠の生命を放棄し、人間になりたい、と打ち明ける。やがてサーカスの舞姫マリオン(ソルヴェーグ・ドマルタン)に想いを寄せるダミエルはついに「壁」を境に東西に隔てられた街「ベルリン」に降り立つ。

(ベルリンの壁崩壊は、公開から2年後のことです。)

この映画の中で、天使は色彩のない世界を生きています。天使の視点で描かれる場面はモノクロ、人間の視点で描かれる場面はカラーで表現されています。ダミエルが天使であることを辞めると、ダミエルには色が見えてきます(映像はモノクロからカラーに転換します)。ダミエルは嬉しくて仕方がない様子で、通りすがりの人に「これは○○という色?」「これは○○色だよね?」と尋ねてまわります。

天使は人間と神との間に位置する存在で、人間の世界のことは何でも知っている、ということになっています。ですから、人間の世界で使われている「色」という概念についても彼は理解しています。しかし、それを体験することは人間にしかできないことなのです。この場面でダミエルは、知識として知っていた「色」を実際に目にすることで人間になったことを実感し、喜んでいるのです。

成長するということ

昔は「7歳までは神のうち」という表現があったと聞きます。乳幼児の死亡率が極めて高かったことに加え、子どもが6歳~7歳くらいにまで成長したらはれて社会の一員として認められるという文化的背景が、この表現にはあるのだそうです。
ダミエルも「色」を体験しながら、天使という超越的な存在から人間という社会的な存在へと成長(?)していきました。私の娘も今後、「色」をはじめとしたさまざまな言葉を覚え、体験していくわけですが、それらを喜びながら成長していってくれたら、親としてもこれほど嬉しいことはありません。

成長を見守るということ

「ベルリン・天使の詩」では、天使が人間になることの喜びだけでなく、苦難も描かれています。娘の成長の先にも同じく、苦労が待っていることでしょう。さて、人間になったダミエルは、(ある事情があって)ピーター・フォーク役のピーター・フォーク(!)に、人間として上手く過ごしていく方法について相談します。すると、彼はこう言います。「こればかりは、自分でいろいろやってみるしかないよ。」

私たち大人も、子どもたちに様々なことを教えることができます。しかし、いくら一生懸命教えたとしても(そして、教えたことがなかなかうまくできなかったとしても)、つまるところ「(子どもたちが)自分でいろいろやってみるしかない」。初めてこの映画を観たときにはまったく気に留めていなかったピーター・フォークのこの台詞が、何年も経ってから心に響くようになるのですから、映画というのは実に面白いものです。

そんな感傷に浸りながら「娘にも、焦らず、自分のペースで色を覚えていってほしい」といったようことを妻に話したところ、「そうはいっても色を覚えてくれないと信号を渡れなくて困るよね」と一蹴されました。

まとめ

  • 浮世ばなれした子育て話には、パートナーからの現実的な切り返しが待っているので注意。

事務所URLもぜひご覧ください。
https://ola-dogo.com

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