道後温泉と松山市街を結ぶ路面電車。
朝いちばんに道後温泉の刻太鼓が鳴ってしばらくすると、
「カタン、カタン」という車輪の音が街に響きます。
道後温泉の、穏やかな一日の始まりです。
およそ130年前に設立されたこの鉄道。
ほぼ同時代に書かれた夏目漱石の小説「坊ちゃん」ではこんな風に書かれています。
停車場はすぐ知れた。切符きっぷも訳なく買った。乗り込んでみるとマッチ箱のような汽車だ。ごろごろと五分ばかり動いたと思ったら、もう降りなければならない。道理で切符が安いと思った。たった三銭である。
当時から小さな車両だったんですね。
それからさまざまな出来事を経て、いまもなお、路面電車は地域の大切な交通手段のひとつとして活躍しています。
そして今年の5月の末、この路面電車であたらしい活躍が始まりました。
2人の女性運転士が誕生したのです。
郊外電車(路面電車でない、普通の鉄道)の車掌を務めていた彼女たち。
運転士になりたいというたっての希望から研修を受けることとなり、国家試験を見事パスして、晴れて路面電車の運転士に登用されたのだそうです。
先日初めて、彼女たちのうちの1人が運転する路面電車に乗り合わせました。
夢をかなえた女性が運転する路面電車。
「カタン、カタン」と響く音。
電車に揺られているうちに、自分の希望もかなうような、そんな気がしてくるのです。
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